内藤泰弘『S.Flight 内藤泰弘作品集』:同人時代に発表した作品を中心に収録した初期短編集
2024年8月18日
今回紹介する1巻完結のマンガは、『トライガン』や『血界戦線』などの作者である内藤泰弘先生の『S.Flight 内藤泰弘作品集』です。
- 同人時代に発表した作品を中心に収録した初期短編集
- 全6編を収録
- 長らく入手困難となっていた同人誌をKADOKAWAから商業単行本化
- 『S.Flight 内藤泰弘作品集』を読むならこちら
概要
『S.Flight 内藤泰弘作品集』は、内藤泰弘先生が同人時代に発表した作品を中心に収録した初期短編集で、全6編を収録しています。
そして、2012年に「コミティア100」に合わせて上梓され、長らく入手困難となっていた同人誌を2018年2月にKADOKAWAから商業単行本化したものです。
また、収録されているのは以下のようです。
サンディと迷いの森の仲間たち | 1989年5月に発表された初めての同人誌。 1990年にふゅーじょんぷろだくとの『Little boy』に再録。 |
僕等の頭上に彼の場所 | 1990年8月に発表。 |
Christmas Heart | 1990年12月に発表。 オリジナルは正方形という変則的な判型で、紫のインクで印刷された。 |
Call xxxx | 1992年7月に同人誌として発表後、集英社のスーパージャンプ漫画大賞で準入選。 1994年に『スーパージャンプα』に掲載。 表題の「xxxx」は手紙の最後に書くキスのことで、字として読まない。 |
Christmas Heart Again | 1993年12月に発表。 オリジナルは横長・横綴じという変則的な判型。 「Christmas Heart」の続編。 |
Satellite Lovers | 1997年4月に少年画報社の『ヤングキングアワーズ』で発表。 個人誌で出していない商業掲載作品。 |
あらすじと感想(少しネタバレあり)
サンディと迷いの森の仲間
あらすじ
ロストアイランドという孤島に訪れた学者のパトスは、迷いの森の奇妙な生物たちとサンディという名の少女と出会う。
サンディは、10年前に祖父と一緒に迷い込み、祖父が亡くなってからもずっとここで暮らしているらしい。
感想
「俺たちの世界はー異人種が住むにはまだまだ暮らしにくいトコなんだ」というパトスの言葉から、この話の世界では、人間とは異なる異人種が存在しており、異人種に対する風当たりが強いことが伺えます。
そして、人間同士でも差別行っているので、異人種との共存が難しいことは容易に想像できます。
この話を読んでから、異なる人種や種族との共存について考えました。
ただし、パトスとサンディの過去については、もう少し描写があった方が良かったと思いました。
僕等の頭上に彼の場所
あらすじ
平成2年7月、予備校に通う18歳の咲添かなみ(さきぞえかなみ)は、電車の中で吊り輪に捕まり眠るサラリーマンに寄りかかられ押し倒されるが、サラリーマンから丁寧な謝罪を受けた。
その後、日も暮れ気分転換に出かけた海でかなみは、昼間にかなみを押し倒したサラリーマンと再会する。
感想
かなみは、当たり前で平穏な暮らしに何となく嫌気が差していたが、雲の海の中にいる空を泳ぐクジラを見たことで、何か心情が変わったと思いました。
また、その後のことがはっきりと描写されておらず、読者の想像におまかせとなっています。
私は、かなみが平凡ながらも幸せに生きていると思っています。
Christmas Heart
あらすじ
サンタクロースの孫娘クロウディアは、祖父の代わりにプレゼントを配りに行く。
サンタクロースを信じる子供が少なくなったことによって、祖父は存在が消えそうになり、寝込んでいるからだ。
感想
クロウディアがプレゼントを渡した子供が、大人になって世界一クリスマスの素敵な都市をつくったおかげで、ハッピーエンドになったのが良かったです。
Call xxxx
あらすじ
貧民街の売春婦の私生児として生まれ、孤児院で育ったランヴェルト・E・ハインツは、世界は灰色だと思っていた。
そして、そんな世界から逃げ出すために、人類初の恒星間宇宙飛行士のスカウトを受けた。
しかし、そのためには、コールドスリープで40年以上の眠りにつく必要があった。
感想
ランヴェルトのような人生を歩んでいたら、コールドスリープで40年以上の眠りについてでも世界とおさらばしたいと思っても仕方ないと思います。
そんなランヴェルトも、自分のことを大切に思ってくれる人がいることを知って、灰色だった彼の世界は色が付いたのではないかと思います。
ただ、話の中でコールドスリープの期間が、40年だったり、50年だったり、45年だったりして統一されていなかったのが少し気になりました。
Christmas Heart Again
あらすじ
サンタクロースの孫娘クロウディアがプレゼントを配り終えて帰宅すると、そこにはアルカンフルという名の青年がいた。
久しぶりに再会したアルカンフルは、家業の死神を引き継ぐことになったと言う。
そして、クロウディアに自身の初仕事に協力してほしいと依頼する。
感想
前作の「Christmas Heart」と比べると悲しい話になっています。
そして、人の死について考えさせられます。
また、横長・横綴じという変則的な判型だったものを掲載しているので、読みにくいです。
特に、横向きにできないパソコンで読んでいるとかなり読みにくいです。
Satellite Lovers
あらすじ
崩壊し、荒廃した世界で、仲間たちとさまよっている蒼音(あおね)は、機会に夢中の恋人トビオと別れた夢を見た。
そんなある夜、雑音しか入らなかった小さなラジオにエノアと名乗る女性の声が流れ出す。
蒼音と仲間たちは、電波の発信源を目指して移動を開始した。
感想
「Christmas Heart Again」と同様に、人の死について考えさせられました。
そして、失って初めて隣りにいてほしい大切な人がわかるのは悲しいと思いました。
できれば、失う前に気づいてほしかったです。
また、最後の方に出てくる英語の詞は、日本語約も併記していればわかりやすかったと思いました。
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